黄昏のエポック - バイロン郷の夢と冒険

かわまりの読書ルーム II

Entries from 2021-09-11 to 1 day

黄昏のエポック(目次)

目次 第一話 レマン湖の月 (1816年夏 スイス ) 第二話 優しき姉よ (1814年 ~ 1816年春 イギリス) 第三話 ため息橋にて (1816年秋-1818年初、イタリア) 第四話 青い空、青い海 (1809年夏 ~ 1811年秋 ポルトガル→スペイン→アルバニア→ギリシア→トルコ…

【読書ルームII(124) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

最終話 ギリシャに死す(一八二四年)およびあと書き等 5/5 付記2 (史実との異同) 本作は歴史小説ではあるが、史実をできる限り詳細に写すことが目的ではなく、ナポレオン失脚後のヨーロッパを生き抜いた詩人の模索を綴るために「夢」という形を取ったもの…

【読書ルームII(123) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

最終話 ギリシャに死す(一八二四年)およびあと書き等 4/5 あと書き 「夢落ち」というのは小説の禁じ手である。もし力量のある小説家が主人公が翻弄される波瀾万丈の物語を描いた後で主人公が目を覚まして服を着替えて朝食を取って何食わぬ顔で満員電車で…

【読書ルームII(122) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

最終話 ギリシャに死す(一八二四年)およびあと書き等 3/5 バイロンの異母姉のオーガスタ・リーはバイロンが社交界の寵児だった頃から王家の侍女として王族の人々の相談相手となる大人しい賢女として高い評価を得ていた。バイロンが亡くなる数年前に新国王…

【読書ルームII(121) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

最終話 ギリシャに死す(一八二四年)およびあと書き等 2/5 ピエトロ・ガンバは涙でかき曇る目で父ガンバ伯爵に宛てて手紙を書き、バイロンの遺体をイギリスに搬送する費用負担を要請した。手紙の中でピエトロはこう書いた。「バイロン卿はヨーロッパ市民で…

【読書ルームII(120) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

最終話 ギリシャに死す(一八二四年)およびあと書き等 1/5) 「閣下(シニョーリ)、気がつかれましたか?」ピエトロ・ガンバはバイロンの横でかがみ込んで熱でやせこけたバイロンに顔を近づけた。バイロンとピエトロ・ガンバは数名の従者と共通の友人トレローニー…

【読書ルームII(119) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

第九話 スコットランドの荒野にて(一七九八年 イギリス)5/5 アバディーンの街並みと仮住まいの掘立て小屋が見えるようになる前にジョージは前方のはるかかなたからこちらに向かって歩いている女の姿を見た。アグネスの夫だという騎手の男もほとんど同時に…

【読書ルームII(118) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

第九話 スコットランドの荒野にて(一七九八年 イギリス)4 /5 ジョージの母は日に日にむずかしくなっていった。香水屋に手紙を取りに行って戻った後、鬱々として藁布団の上に身を横たえて何もしないでいることも多くなった。ある日、母はとうとう癇癪を起…

【読書ルームII(117) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

第九話 スコットランドの荒野にて(一七九八年 イギリス)3/5 「お帰りなさい。」とジョージとアグネスが言うと母は黙って小屋の中に入り、藁布団の上に座ってうなだれた。「昨日の晩、思い当たるところには全部手紙を書いたと思ったけれど、二、三思いつい…

【読書ルームII(116) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

第九話 スコットランドの荒野にて(一七九八年 イギリス)2/5 翌朝、目が覚めた時には陽が高く上っていた。学校に行かなくてよくなってから数日間は目まぐるしさもてつだってジョージは学校を恋しいとは思わなかった。しかし、町外れの小屋に落ち着き、別れ…