黄昏のエポック - バイロン郷の夢と冒険

かわまりの読書ルーム II

黄昏から暗闇に、そして黎明から今日へ

日本では何年かぶりの総選挙が先週行われて戦後史上最低の投票率が記録されました。投票率についてはあれやこれや言うことはありません。自分の一票が国政の方向を決定すると思う人はいないしいたら少し頭がおかしいでしょうが、一方で「自分の一票が民意の…

黄昏のエポック これからどこへ?

作品目次 編集が済み次第、アマゾンから電子出版します。出来れば今年中に本ブログで発表した本作品ともう一つの作品の発表を完了したいと思います。わたしがこの二作品の全文を公開した意図の根底にはある強いこだわりがあります。それは英米を中心として始…

黄昏のエポック(目次)

目次 第一話 レマン湖の月 (1816年夏 スイス ) 第二話 優しき姉よ (1814年 ~ 1816年春 イギリス) 第三話 ため息橋にて (1816年秋-1818年初、イタリア) 第四話 青い空、青い海 (1809年夏 ~ 1811年秋 ポルトガル→スペイン→アルバニア→ギリシア→トルコ…

【読書ルームII(124) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

最終話 ギリシャに死す(一八二四年)およびあと書き等 5/5 付記2 (史実との異同) 本作は歴史小説ではあるが、史実をできる限り詳細に写すことが目的ではなく、ナポレオン失脚後のヨーロッパを生き抜いた詩人の模索を綴るために「夢」という形を取ったもの…

【読書ルームII(123) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

最終話 ギリシャに死す(一八二四年)およびあと書き等 4/5 あと書き 「夢落ち」というのは小説の禁じ手である。もし力量のある小説家が主人公が翻弄される波瀾万丈の物語を描いた後で主人公が目を覚まして服を着替えて朝食を取って何食わぬ顔で満員電車で…

【読書ルームII(122) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

最終話 ギリシャに死す(一八二四年)およびあと書き等 3/5 バイロンの異母姉のオーガスタ・リーはバイロンが社交界の寵児だった頃から王家の侍女として王族の人々の相談相手となる大人しい賢女として高い評価を得ていた。バイロンが亡くなる数年前に新国王…

【読書ルームII(121) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

最終話 ギリシャに死す(一八二四年)およびあと書き等 2/5 ピエトロ・ガンバは涙でかき曇る目で父ガンバ伯爵に宛てて手紙を書き、バイロンの遺体をイギリスに搬送する費用負担を要請した。手紙の中でピエトロはこう書いた。「バイロン卿はヨーロッパ市民で…

【読書ルームII(120) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

最終話 ギリシャに死す(一八二四年)およびあと書き等 1/5) 「閣下(シニョーリ)、気がつかれましたか?」ピエトロ・ガンバはバイロンの横でかがみ込んで熱でやせこけたバイロンに顔を近づけた。バイロンとピエトロ・ガンバは数名の従者と共通の友人トレローニー…

【読書ルームII(119) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

第九話 スコットランドの荒野にて(一七九八年 イギリス)5/5 アバディーンの街並みと仮住まいの掘立て小屋が見えるようになる前にジョージは前方のはるかかなたからこちらに向かって歩いている女の姿を見た。アグネスの夫だという騎手の男もほとんど同時に…

【読書ルームII(118) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

第九話 スコットランドの荒野にて(一七九八年 イギリス)4 /5 ジョージの母は日に日にむずかしくなっていった。香水屋に手紙を取りに行って戻った後、鬱々として藁布団の上に身を横たえて何もしないでいることも多くなった。ある日、母はとうとう癇癪を起…

【読書ルームII(117) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

第九話 スコットランドの荒野にて(一七九八年 イギリス)3/5 「お帰りなさい。」とジョージとアグネスが言うと母は黙って小屋の中に入り、藁布団の上に座ってうなだれた。「昨日の晩、思い当たるところには全部手紙を書いたと思ったけれど、二、三思いつい…

【読書ルームII(116) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

第九話 スコットランドの荒野にて(一七九八年 イギリス)2/5 翌朝、目が覚めた時には陽が高く上っていた。学校に行かなくてよくなってから数日間は目まぐるしさもてつだってジョージは学校を恋しいとは思わなかった。しかし、町外れの小屋に落ち着き、別れ…

【読書ルームII(115) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

第九話 スコットランドの荒野にて(一七九八年 イギリス)1/5 さるほどに、一人の「天使」の目に見えぬ加護のおかげでこの廃嫡の「少年」は太陽の光に酔って生きつづけその飲むものは悉く、その食ふものは悉く、朱金の色の神酒と化り、不老長寿の御饌とな…

【読書ルームII(114) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

(第八話 暴風雨 (一八一八年 ~ 一八二二年 イタリア 17/17) 翌日、ヴィアレッギオ近辺の漁民たちが、かつては詩人パーシー・ビッシュ・シェリーだった、その見るもおぞましい物体を麻布でくるみ、ボートに乗せて悲劇の結末を確かめようと人々が集まった…

【読書ルームII(113) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

(第八話 暴風雨 (一八一八年 ~ 一八二二年 イタリア 16/17 ) テレサの馬車がピサとリヴォルノの間十マイルを並み足の速さで進み、リヴォルノ郊外のバイロンの別荘に三人の女と従者たちが到着した時、あたりはもう真っ暗な闇に包まれていたが、別荘の中に…

【読書ルームII(112) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

(第八話 暴風雨 (一八一八年 ~ 一八二二年 イタリア 15/17 ) その後の四日の間、バイロンはハント家のことはシェリーとウィリアムズに任せっきりで、ガンバ伯爵父子が国境の外で必要とするものを買い揃えたり、自分の屋敷で預かれるものを運ばせたりする…

【読書ルームII(111) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

(第八話 暴風雨 (一八一八年 ~ 一八二二年 イタリア 14/17 ) 「二週間ほど前、あれは六月十六日でした。メアリーが昼前に腹が痛いと言い出したので寝室に寝かせて、僕が書斎で『生の勝利』の始めのほうを書いていると突然、寝室からメアリーのものすごい…

【読書ルームII(110) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

(第八話 暴風雨 (一八一八年 ~ 一八二二年 イタリア 13/17 ) 夕食の後で長旅で疲れきったハント家の人々はさっさと寝室に引き下がり、バイロン、シェリー、ウィリアムズの三人が居間に残った。シェリーは上機嫌だった。「彼が創刊する雑誌はきっと、うま…

【読書ルームII(109) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

(第八話 暴風雨 (一八一八年 ~ 一八二二年 イタリア 12/17 ) [現在のリヴォルノの入江から対岸を望む。対岸にバイロンの避暑地があった。] 「閣下(ロード)。」とシェリーが言った。バイロンが振り向くとシェリーは続けた。「リー・ハントがとうとうイタ…

【読書ルームII(108) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

(第八話 暴風雨 (一八一八年 ~ 一八二二年 イタリア 11/17 ) 「シェリー、メアリー、すまなかった。」と揺れる蝋燭の灯の前で頭を抱え、バイロンは呻いた。「君たち二人はアレグラを、生まれてから一年以上の間、自分たちの子供とわけへだてなく育ててく…

【読書ルームII(107) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

(第八話 暴風雨 (一八一八年 ~ 一八二二年 イタリア 10/17 ) バイロンは死者の思い出に耽るのを止めた。仕事をしなければならなかった。バイロンはなぜ、「決定版、審判の幻影」とマレーからの手紙を取り出したのかを思い出した。編集者で優れた批評家の…

【読書ルームII(106) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

(第八話 暴風雨 (一八一八年 ~ 一八二二年 イタリア 9/17 ) メアリーが口を開いた。「そう・・・わかりました。それが閣下がアレグラを修道院に預けっぱなしにしている理由だったのね。」バイロンは黙ってうなずいた。自由主義者の夫婦、怪我をしたバー…

【読書ルームII(105) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

(第八話 暴風雨 (一八一八年 ~ 一八二二年 イタリア 8/17 ) [ピサの斜塔にはスペインを旅したことがある者には直ぐにそれと分かるイスラム建築を彷彿とさせるアーチがあります。この挿話の最後もご覧ください。] それから後、バイロンとピエトロが取った…

【読書ルームII(104) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

(第八話 暴風雨 (一八一八年 ~ 一八二二年 イタリア 7/17) [上はフィレンツェのアルノ川にかかるポンテ・ヴェッキオ(古橋)。ウィキペディアなどによると、ローマから北進した古代ローマ人がこのアルノ川の川岸に咲き乱れる花々を望見して花の女神フロー…

【読書ルームII(103) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

[第八話 暴風雨 (一八一八年 ~ 一八二二年 イタリア 6/17) [ラベンナにある世界遺産建造物内のモザイク画] 抱き合って再会を喜びあった後、シェリーは言った。 「閣下(ロード)、閣下と地続きの土地に移ってきて、いつでも会えると思っていたのですが、こ…

【読書ルームII(102) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

【第八話 暴風雨 (一八一八年 ~ 一八二二年 イタリア 5/17)】 [ラベンナにある世界遺産建造物内のモザイク画] 「二重活動家(ダブル・エージェント)の可能性がある人間が自分の屋敷の前で殺されたのは正に、カルボナリの中に自分が二重活動家(ダブル・エ…

【読書ルームII(101) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

第八話 暴風雨 (一八一八年 ~ 一八二二年 イタリア 4/17) [ラベンナにある世界遺産建造物内のモザイク画] 「家に戻ってきてから何回か、父と相談する機会を持ちました。夜、人が寝静まった頃に、特別なやり方で父の寝室の扉を叩くんです。親子なのに何で…

【読書ルームII(100) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

第八話 暴風雨 (一八一八年 ~ 一八二二年 イタリア 3 /17) [ラベンナの一風景] 「閣下(シニョーリ)、閣下の国では議会が発達し、人々は議会を通して国の政治に参加することができます。こういうしくみは社会を発展させるんでしょうね。」「そうかもしれません…

【読書ルームII(99) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

第八話 暴風雨 (一八一八年 ~ 一八二二年 イタリア 2/17) [ラベンナの一風景] 一八一九年の春にテレサ・グィッチオーリ伯爵夫人と出会ったことによって、バイロンは中産階級の女性の間を花から花へと飛び回る蝶のように渡り歩く生活に終止符を打ち、その…

【読書ルームII(98) 黄昏のエポック- バイロン郷の夢と冒険】

第八話 暴風雨 (一八一八年 ~ 一八二二年 イタリア 1/17) [上は有名なピサの斜塔。ルネッサンス期の科学者ガリレオ・ガリレイがここで落下の実験を行ったとされる。] 「パーシーは書いて、書いて、書きまくっています。私の校正が追いつかないくらいの速…